2.仕組みと私たちの役割
Structure and our role
人材派遣の仕組みと多様な働き方を支援するエージェント機能についてご紹介します。

労働市場における派遣の規模

人材派遣とは

正社員や契約社員は働く企業と直接雇用契約を結びますが、人材派遣の場合は「派遣会社」と「派遣先企業」、二つの会社が登場するのが特徴です。派遣社員にとって、派遣会社は雇用契約を結ぶ雇用主、派遣先企業は実際に仕事をする勤務先となります。
派遣会社はお給料の支払いや福利厚生、お仕事や就業条件の紹介、派遣先企業との交渉、スキルアップ研修などを通じて、派遣社員をサポートします。
派遣先企業は派遣社員に対して仕事の指示を行います。
派遣会社にスタッフ登録した段階では雇用契約は結ばれません。派遣先企業が決定し、お仕事が始まる時点で雇用契約が発生し、派遣期間の終了とともに契約も終了します。
人材派遣には「一般派遣」「紹介予定派遣」の二種類があります。上記の説明は「一般派遣」の内容です。通常「派遣社員」と呼ばれているのはこの一般派遣のこと。働く人の希望や条件に合わせて仕事を選ぶことができる、自由度の高い働き方です。

派遣の仕組み

紹介予定派遣とは

派遣先に直接雇用されることを前提に、一定期間派遣社員として就業、派遣期間の終了時に派遣社員と派遣先企業が合意すれば、正社員や契約社員としての採用が決まる働き方です。派遣期間は最大で6ヶ月、3ヶ月程度に設定されることが多いようです。
「自分に合った職場で働きたい」求職者と、「いい人材を採用したい」企業が、派遣期間中にお互いを見極められるのが最大のメリット。仕事内容や職場環境、人間関係など、就職や転職の際にありがちな入社後のギャップを減らすことができ、安定した雇用関係を築くことが可能です。 「正社員で働くからには長く働きたい」「経験が少なく転職活動が不安」「面接が苦手で自分をアピールできない」「自分に向いている仕事がわからない」。就職・転職活動には不安がつきものです。
紹介予定派遣なら、派遣会社から仕事探しのアドバイスを受けられ、場合によっては教育研修などのバックアップもあります。就職・転職が初めての方でも効率よく就職活動ができる上、正社員採用の可能性が高まる働き方です。

紹介予定派遣の流れ

派遣の流れ

登録から就労・派遣更新までの流れ(派遣社員)

派遣社員として働く場合、勤怠報告や勤務に関する相談などは雇用主である「派遣会社」に、業務自体に関わる報告・相談などは「派遣先企業」に行います。社員やアルバイトとして働く場合との大きな違いのひとつです。

登録から就労・派遣更新までの流れ(派遣社員)

業務の依頼から派遣受入開始・更新までの流れ(派遣先企業)

派遣会社から依頼業務に合った人材が派遣され、派遣先企業の指揮命令のもとで業務にあたるのが人材派遣です。1日から長期まで、また業務の繁閑に合わせて短時間勤務や週3だけなど、ご希望のニーズに合わせた柔軟なご活用が可能です。

業務の依頼から派遣受入開始・更新までの流れ(派遣先企業)

派遣が利用可能な期間

派遣で実現する「多様な働き方」

「少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少」「育児や介護との両立など、働く人のニーズの多様化」。求人倍率はバブル期を超え、人手不足感は深刻の度合いを増しています。日本経済を維持するためには、投資やイノベーションによる生産性向上とともに、就業機会の拡大や意欲・能力を存分に発揮できる環境を作っていくことが重要な課題です。安倍政権が推進する「働き方改革」は、これらの課題を解決するため、働く人がそのライフステージに応じて多様な働き方を選択できる社会を実現しようとするものです。
しかしながら、企業の働き方改革への対応はまだ始まったばかり。多様な働き方を求める働き手に十分な選択肢があるとは言えません。

派遣会社は、企業の人材ニーズから「多様な働き方」「柔軟な働き方」の芽を見つけ出し、さまざまなニーズを持った派遣社員が希望する働き方を実現する支援をしています。「働く人のエージェント」、その機能が今、注目されています。

派遣会社は納得できる契約の「エージェント」に

リクルートワークス研究所 労働政策センター長
中村 天江 氏

働き方の多様化が進んでいます。雇用形態の多様化や、外国人や高齢者といった属性の多様化にとどまらず、近年では、副業やリモートワークなど、柔軟な働き方も広がりつつあります。
働き方が多様化すると、一人一人の雇用契約条件は個別化します。契約が個別化するほど、個人は自身の契約内容を理解し、交渉する術を身に着けなければなりません。
現状、有期雇用契約で働く人のうち、「労働条件通知書をもらったか覚えていない」が10.9%、「文書でも口頭でも伝えられていない」が7.6%います(連合、2017年、「有期契約労働者に関する調査報告」)。18.8%は自身の雇用契約期間を理解していません(リクルートワークス研究所、2017年、「全国就業実態パネル調査」)。これでは、契約条件の納得度を高めていくことは覚束きません。

 

これまで、いわゆる日本的雇用のもとでは、雇用期間は永続的に保障され、会社が人事権をもち勤務地や仕事を決めるので、個人は自身の労働契約条件に関心をもつ必要がありませんでした。たとえ雇用契約条件に不満があったとしても、個別に交渉する余地もほとんどありませんでした。ハーシュマンの理論によれば、会社から“Exit(退出)”ができない状況で、“Voice(声)”をあげることは困難だからです。だからこそ、個人ではなく労働組合を通じて、集団的に交渉することが重要なのです。
しかし、今、「いわゆる正社員」以外の雇用契約条件は、個別の労使コミュニケーションを強化することで、双方に納得度の高いものにしていく方向に進んでいます。有期雇用契約で働く人々の雇用期間や待遇への不満の声などを受け、労働契約法や労働者派遣法が改正され、雇用安定や均等均衡待遇が図られています。今後は、同一労働同一賃金の法整備により、さらに使用者の労働者への待遇の説明義務は強化されます。
とりわけ派遣社員に関しては、コミュニケーションが派遣先・派遣元・派遣社員の三者にわかれる分、個別のコミュニケーションをいかに実現するかが肝要です。

 

派遣会社は、これまでも、個人と企業の間に入り双方が納得できる契約を結ぶ「エージェント」の役割を担ってきました。派遣社員と派遣先の間で、仕事の内容や勤務地・就業時間などを双方のニーズに合わせて調整を行い、希望する仕事に就業できるよう教育研修や職業経験を通じて派遣社員のキャリア形成を支援してきました。派遣社員の雇用管理の他にも派遣社員の処遇を向上させていくため取り組みや派遣料金の交渉、雇用契約が満了した場合にも新たな仕事へのマッチングも行っています。派遣会社は、このエージェント機能さらに磨き上げていく必要があるでしょう。
加えて、今後は、派遣以外の働き方でも、契約の重要性が高まります。社会で、個人と企業双方が納得できる契約をいかに実現するのかの具体的方法への関心が高まる中で、派遣会社がもつ契約締結ノウハウには、ヒントが沢山あります。派遣会社のエージェント機能は、それだけ本質的なものなのです。
派遣会社には、働き方のさらなる多様化に向けて、個人と企業双方が納得できる契約を結ぶ「エージェント」としての役割を磨いて いくことが期待されています。

プロフィール

1999年リクルート入社。就職・転職・キャリア形成支援のサービス立ち上げや企画を経て、2009年リクルートワークス研究所に異動。
「労働市場の高度化」をテーマに調査・研究を行い、「2025年の働く」「Work Model 2030」などを発表。
厚生労働省「同一労働同一賃金の実現に向けた検討会」、経済産業省「雇用関係によらない働き方に関する研究会」等の委員を務める。
短期派遣の研究で日本労務学会研究奨励賞受賞、博士(商学)、中央大学客員教授。

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